蒸気機関車と電車、どちらが効率的か。AIと対話した記録
きっかけ:「なんとなく知っていた」が気になってしまった
この対話の出発点は、蒸気機関車ゲームの実況動画を見ていた時。
発電タービンの効率が高いことは、なんとなく知っていた。電車が蒸気機関車より効率的なことも、なんとなく知っていた。それなのに、ふと「電車の電気も石炭とか火力発電で作られているよな、だとしたら蒸気機関車と大差ないんじゃないか」という気持ちがよぎった。
これは矛盾している。タービンが高効率と知っているなら、電車が有利なのは分かるはずだ。それでも疑問が浮かんだのは、「知っている」と「腹落ちしている」の間に隙間があったからだと思う。知識として持っていたが、変換の連鎖としてつながっていなかった。
だからAIに投げた。「蒸気機関車と電車、どっちがエネルギー効率がいいの?電車の電気も石炭とか火力発電で発電された電気使われているだろうしきになった」と。
変換の連鎖として整理される
返ってきた答えは、結論として予想通りだったが、整理の仕方が手持ちにはなかった。
蒸気機関車の熱効率は実用運転で6〜8%。電車は、発電所(50〜60%)→ 送電ロス(約5%)→ モーター(90〜95%)を掛け合わせると約40〜50%。同じ石炭100でも、車輪に届くエネルギーが7程度と42程度では、5倍以上の差になる。
そして「なぜここまで差が出るか」の説明が、自分の中でつながっていなかった部分だった。
- 発電所は大型設備で高温高圧を実現できる。蒸気機関車は重量・サイズの制約で低温低圧しか作れない
- 発電タービンは最初から回転運動。蒸気機関車はピストンの往復運動を回転に変換するロスがある
- 発電所には復水器があり蒸気を再利用できる。蒸気機関車はそのまま排気するしかない
「発電タービンが高効率なのは知っていた」という自分の知識は、発電所という大型集中設備だからこそ成立する高効率という文脈とセットになっていなかった。タービンが単体で優秀なのではなく、大規模・高温高圧・復水器付きという条件が揃って初めて高効率が実現する。そこが抜けていた。
「ディーゼルも気になる」から生まれた推論
最初の回答の末尾に「ディーゼル機関車との比較も面白いテーマ」とあった。確かに気になる、と続けた。
返ってきた内容で意外だったのは、ディーゼル機関車の主流が「ディーゼル電気式」——エンジンで発電してモーターを回す構成だという点だった。効率はエンジン単体で40%程度、電装系90%で掛け合わせて約36%。蒸気の6〜8%とは桁が違う。
ここで一つの解釈が浮かんだ。「ディーゼルも結局モーターで動かしている。ということは、蒸気機関車が非効率というより、発電タービンとモーターの効率が良すぎるってことなのかな?」と問い返した。
AIの評価は「50%正しい」だった。
モーターが異常に高効率なのは事実——効率90〜95%、トルク特性が理想的、回生も可能。ただし「蒸気機関車が非効率なのはモーターが優秀だからではなく、蒸気機関そのものが熱力学的に不利だから」という整理が返ってきた。熱機関の効率・機械変換の効率・電気変換の効率、この3層が電車では全部高効率側に寄っているのに対し、蒸気機関車は熱機関も機械変換もどちらも低効率だ、と。
自分の仮説は半分当たっていたが、残りの半分——蒸気機関車側の構造的な不利——を省略していた。「50%」という評価は的確だった。
話がEVに飛んだのは、鉄道の話の延長だった
「なるほどねー、でもそう考えると自動車のEV化も仕方ない、みたいなところはあるのかな。にしてもガソリン車が根強いよね」
この問いはわりと自然に出てきた。「分散型の小型熱機関より、集中型の大型熱機関+モーター」という構図が鉄道と自動車で同じならば、自動車もEV化の方向に引力がかかるのは当然だろう、と。
ただAIの返答は「効率だけでは決まらない」という整理だった。
純粋なエネルギー効率ではEVが約2倍有利(火力発電前提でも)。しかしガソリンのエネルギー密度は約12,000 Wh/kgで、リチウムイオン電池の200〜300 Wh/kgとは桁違いだ。効率差を考慮した有効エネルギーで比較しても、まだ約10倍の差が残る。そこに、インフラの成熟度・初期コスト・充電時間・文化的慣性が加わる。
鉄道が電化できたのは、架線を張れる固定路線であり、重量増加を吸収できる車体の大きさがあったからだ。自動車は重量が航続距離に直結する。鉄道のようにエネルギー密度の弱点を構造的に回避できない——この指摘で、鉄道とEV自動車の非対称性がはっきりした。
そしてAIが投げてきた「もしガソリンが今日発明された技術だったら、爆発を制御してピストンを動かす装置を採用するだろうか?」という問いが印象に残った。EVは工学的に素直な解で、内燃機関は歴史的最適解——という整理で、この流れは閉じた。
「エネルギー密度はかなり要因がありそう」で締まった対話
「エネルギー密度はかなり要因がありそう、ありがとう」という自分の言葉でこの対話は終わっている。
振り返ると、得たのは新しい知識というより、バラバラに持っていた知識の間に橋をかけることだった。タービンが高効率なのは知っていた。電車が有利なのも知っていた。それが「なぜ」つながっているのか——大型集中設備・高温高圧・往復ではなく回転・復水器による蒸気再利用——という構造的な説明を、自分は持っていなかった。
「50%正しい」という評価が返ってきたとき、残り50%を補完してもらうことが、そのまま理解の構造化になった。
「なんとなく知っていること」を問いにして投げると、自分の理解のどこに穴があるかが見える。知識の輪郭を確認しながら、言語化できていなかった「なぜ」を埋めていく——今のところ、これがAIとの対話で一番手応えのある使い方だと思っている。